"ワクワク"を諦めるな!女子プロバスケ選手が創るデュアルキャリアにあった、続ける努力と辞める勇気

女子プロバスケットボール選手/イラストレーターなど 山田愛

"ワクワク"を諦めるな!女子プロバスケ選手が創るデュアルキャリアにあった、続ける努力と辞める勇気

女子プロバスケットボール選手/イラストレーターなど 山田愛

学校を卒業して就職する。新しい目標を見つけて転職する。畑は違えど正社員や契約社員などとして活躍する人はほとんどだと思います。一方で、多様な働き方が世の中浸透してきており、副業解禁をはじめYoutuberの台頭など、働き方が大きく変わっている昨今。中でもアスリートに関しては、競技を続けながら働く『デュアルキャリア』という選択をしている人も非常に多いのではないでしょうか。

今回は女子プロバスケットボール選手でありながら、肩書がわからないくらい多くの草鞋を履いて活動されている山田愛さんを直撃。「楽しいことは自分で作る」「興味を持った今やってみる」と語る彼女が、これまでの海外挑戦を通じて感じたこと・伝えたいこととは?また、アスリートと個人事業主という形で見えてきた、新しいキャリアの作り方とは一体……?

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


海外挑戦には当然お金が必要。女子プロバスケ選手の現在の活動とリアル

__山田さん、まずはスポジョバに登録いただいてありがとうございます!でもプロバスケ選手ですよね?いわゆるデュアルキャリアを実現していこうとかお考えなんですか?

山田:そうですね!そこまでは情報収集も含め、良いお仕事があればなと思って、登録させてもらいました。ちなみに私、アメリカとかオーストラリアには挑戦してきたんですけれど、やっぱりお給料の面は厳しいんですよ。海外挑戦って華やかに見えがちかもしれませんが、たとえばオーストラリアのトップチームとかWNBAに行けば、日本でも「結構いいな」って思えるくらいのお給料はもらえるんですけれど、それこそ「お給料は月5~8万円の契約」なんてこともあります(笑)。だから今みたいに海外挑戦できない時期に、日本で貯金出来たらいいなって、スポジョバさんには登録させてもらいました。

__月5~8万円ですか!?(笑)

山田:そうですよ(笑)。まぁ、渡航費とか家とか保険とかは全部含まれていることが多いんですけれど、それを差し引いて手元に残るのがその額ですね。いわゆる寮生活みたいな感じになるんですけれど、インポートと言って、現地以外の海外選手同士で住むんです。トップリーグじゃなくて、たとえばB2とかJ2のチームって言ったらわかりやすいですかね。そういうチームだと、どうしてもそのくらいのお給料なんですよ。

__デュアルキャリアの実現というよりは、海外挑戦のための資金調達の一環として、日本にいる今、できるお仕事を探されてるということなんですね!

山田:リアルですよね。デュアルキャリアって。いろんなインタビュー見てきましたけど、私はまだ現役で最前線で頑張りたい。バスケしながら今を生きていかないといけなから、お金はね。もちろん、アスリートとしてのキャリアが終わったあとのことももちろんですけれど、今しかできないこと、今必要なことにフォーカスして、色んな活動を続けたいなって思っています。

__となると、いずれは日本に戻ってきて働くことも視野には入ってるんですか?海外挑戦を続けている山田さんなので、きっと海外で働きたいんだろうなって思ってしまっていました。

山田:正直、日本で働くビジョンはないんです。私、小さい頃からの目標は、海外でプレイすると同時に、海外で働きたいって思ってたんです。その上で最近ずーっと海外挑戦を2年くらい続けてきて見えてきた夢は、海外にスポーツ留学したい人のサポートとか、通訳とか現地コーディネートっていうのを、やっぱり現地の方でやりたいんですよね。来た選手を受け入れて、たとえばスキルコーチとつなげたり、毎日相談乗ってあげたり、英語でバスケを教えてあげたりとかやっていったら面白いかなって思っていて!私が体現したいデュアルキャリアの話でいくと、プロバスケ選手として活動しながら現地コーディネーターとして活躍したい。そんなことを、現時点では思っています!





日本と世界には、想像以上に大きなギャップがあった

__めちゃめちゃ良いですね!山田さんの活躍を見ることで、日本のアスリートが海外挑戦をもっとしやすくなるだろうなって思います!ところで、そもそもどうして海外挑戦したいなって思ったんですか?

山田:もとを辿ると、桜花学園時代になりますね!2年生のときにUカテゴリーで世界大会に行くことができて。そのときに初めて世界と戦って、カルチャーショックが結構大きかったんです。言語の違いもプレイスタイルも、バスケットに対する姿勢もバスケットの文化そのものも全然日本とは違う。公園でバスケしていると「やっほー!一緒にやろう」って入ってきたりするんです(笑)。それがすっごく私にはフィットして、それで小さい頃からの夢が現実になったというか、より「海外でプレーしたり生活したりしたいな」って思ったのがキッカケですね。そのあとも何度か挑戦して今に至るんですけれど、行く度に刺激を受けるし何よりワクワクしてる自分がいるので!

__なるほど!桜花学園卒業後も名門・JXに所属していたと思うんですが、当時から現在に至るまでのお話も伺えますか?

山田:Uカテゴリーで海外に興味を持ってからは「どうやったら海外で挑戦できるかな」って考える毎日で、結論「実業団入って日本代表入りして海外からオファーもらう」が最短ルートだと思ったんです。それでJXに入団させてもらったんですけれど、ルーキーイヤーの開幕前に左膝の前十字やっちゃって。そのあと「ここが勝負!」と思った5年目にも、今度は逆の右膝の前十字を断裂。そこで気持ちが切れてしまって「一回、バスケのこと考えるの辞めよ!」ってなったんです。もう代表入りして海外からオファ―もらうって、何年後になるかわからないし。私も当時23歳とかでしたし。それでJXを辞めて、一回休むことにフォーカスしてオーストラリアへ休養しに行ったんですよね。そこで心も身体も回復していたときに、いろんなバスケット関係者と知り合って。色々話していく内に「またココでバスケしたい」って思えて、リハビリから始めてトライアウトとか受けたりして、現地(オーストラリア)のチームと契約できたって流れです。

__ケガをして全てを失ったからこそ、考え方が180度変わったんですね。チャンスを待つのではなく、掴みにいくんだって方向に。

山田:そうそう!待ってても仕方ないなって。だからポジティブに捉えると、海外挑戦する良いキッカケにはなったかなと思います。Wリーグってめちゃめちゃしっかりしてるし、女性アスリートを大切にしようって動きも強いんですけど、一方で日本のチームに所属しながらオフシーズンでどこか海外のチームでプレイってできない決まりがあるんですよ。できれば私も日本のバスケは辞めたくなかったんですけど、やっぱり海外挑戦したかったし、実際挑戦してよかったし。自分には合ってるなって思いますね。

__ちなみに、女子バスケ界で日本と海外との違いってどんなところにあるんですか?それこそ今のお話もそうですけど、たとえばWリーグがWNBAくらいの立ち位置だったら、また話も変わっただろうなと思いまして。

山田:日本の女子バスケって、まだ海外に挑戦できる基盤がないと言いますか。スラムダンク奨学金みたいな制度があったらめっちゃ嬉しいんですけど、現状ないから私みたいに自分で開拓しなきゃいけない。でも、この前も女子3x3では東京五輪の出場権を獲得したじゃないですか。日本の女子バスケ選手って、めちゃくちゃ上手いんですよ!とにかくスキルが高い。なのに、海外で見られる機会がない。海外選手には「日本って女子のプロリーグあるの?」とよく聞かれますから。そういうところのギャップはあると思います。そこが変わったら、もっとスポットが当たるんじゃないかなって思ってますね!





バスケだけが人生じゃない。勢いで始めた〇〇が転機に…?

__そういう日本女子バスケの現状を見てきたからこそ、現地コーディネーターなどの新しい夢も見えてきたわけですね。単純にご自身の海外挑戦だけではなくて、見たものを次の世代につなげようってお考えが素晴らしいと思います。

山田:お金とか色々な問題で、なかなか海外挑戦ってしにくいと思うんですよね。ただこれもきっと時間の問題で、2~3年したら海外挑戦もしやすい環境ができると思うし。でも私には時間がないわけですよ。年齢は止められないので(笑)。それこそ先輩ですけど渡嘉敷来夢選手はスーパースターで海外(WNBA)挑戦したじゃないですか。でも私みたいにトップリーグ以外に挑戦した人はあんまりいないと思います。だからパイオニアになりたいわけでもないですし、自分がやりたいからやってるだけでもあります!ただ、スポンサーもいないのでお金を自分で作らないといけないから、そこは日々頑張りながら……ですが。

__デュアルキャリアをする人もそうですけど、やっぱり目の前の生活がかかってますし、競技を続けるためには必要最低限の収入がないと難しいですからね。その中でも山田さんは、ご自身でクリエイティブを作られたり、ちょっと他の人と違ったお金の作り方をされていると聞いています。その活動についても教えていただけますか?

山田:今、デザインとアートとアパレルとオンラインバスケ教室の運営をやってます!結構重たい怪我だったから、暇になっちゃって始めたのがキッカケなんですけどね(笑)。一回バスケ休憩!ってなって「次も楽しいことしよう」と思ってアート描き始めたら、結構みんな褒めてくれて!嬉しくて調子乗ってやってたら、すごく楽しくなっちゃって(笑)。ありがたいことに、それが今副業みたいな感じでお金も発生してて。その活動は続けていきたいですね。

__これまた怪我キッカケでしたか!一旦落ち着いて考えたりする時間ができたからこそ生まれたアイデアというわけですね!

山田:いや、本当に(笑)。これまでもお話した通り、やっぱり自分は海外で活動したい。じゃあ海外でもできる活動ってなにかって考えたらオンラインなんですよね。自分が面白いとかかわいいとか思うものを形にできているのが、やっぱり楽しくて。ちなみにアートは、ちゃんとバスケとコラボしたものを描いてるんですよ。最近は『Wood Art』と言って、木にアートを印刷してインテリアとして飾れるようにしたり…って販売したりもしています。もうすぐ『Wood Art』のオンライン展示会も開催しますし、そもそもアートはInstagramでも発信してるので、よかったら見てください(笑)。

__そういう収入の作り方をできることもそうですし、すぐ行動できるのが山田さんの強みですよね。あとは純粋にプレイヤーとしてだけではなくて、デザイナー、アーティスト、コーチとか、山田さんの見方って色々できると思うし、さまざまな角度からバスケ業界に影響を与えられる人だと思うんです。ちなみにこの活動を通じてどんなことを伝えたいとかっていかがですか?それともただ好きを発信し続けたいとか?

山田:両方です!アパレルの名前が『Life is a journey』って言うんですけれど、自分が旅に出るときとかすごくワクワクしてるし、絵を描いたりとか誰かに会うときってすごく好きでワクワクするんですよね。だから続けてる。それで、やっぱりバスケットとかお仕事もそうですけど、好きで始めたのになぜかちょっと疲れちゃったり嫌になっちゃったりすることもあると思うんです。そういうときに、私の絵を見てリラックスできたり楽しい気持ちになれたりしたらいいなって思うのと、私の海外挑戦を通じて誰かの何かのキッカケになればいいなって。あとは恐れ多いですけど、日本バスケ界から海外に出ていくキッカケが増えて、日本女子バスケの発展につながればいいなって思ってます。だから両方ですね!楽しいことをしたいし、そういうことを伝え続けたい。





ワクワクした毎日のほうが絶対いい。そんな毎日の作り方

__めちゃめちゃいいですね。これからも山田さんは個性そのままに活動を続けてほしいなって思います。確実に影響を与えてると思いますし。それこそ今やっていることが将来にもつながってると思うんですよね。今っぽい、雇用にとらわれないお金の生み出し方とかは、デュアルキャリアはもちろん多くの人の参考になると本当に思います!

山田:私の場合、怪我とかしんどいことがあった時に、アートとか興味のあることを始めたんですが、結果色んな人と出会えたんですよね。そこから角度を変えて物事を見れるようになったし、カルチャーの違う人から考え方を学んだりして。そうしたら多くの人が私のバスケットを応援してくれるようになったんです。それにすっごい感謝したし、本当に頑張りたいって思えるようになったんです。だから本当に周りに支えられて今があるのは間違いないんですよね。それこそ発信している側で、色んな伝えたいことがあるけれど、実際はツラいことがあって凹むときもあるんですよ(笑)。そういうときに、日本人の友達の大切さは身に染みて感じます。だから常にポジティブで居られるし。その恩返しとして、少なくとも誰かの心に残って、誰かがもっと大きく羽ばたけたらいいなって思います。

__ちなみに、山田さんのこれからの目標と言いますか「今後こういうことやっていきたい」とか、その辺りも伺えますか?

山田:プレイヤーとしてはやっぱり、一回到達しなくてもWNBAには挑戦したいです。あとはユーロリーグ、ヨーロッパのトップリーグでプレイしたいですね。今はやっぱり今しかできないバスケをやっていきたい気持ちが強いんですけど、一方でたとえば絵だったら、どこかの企業さんとコラボして商品出したりしたら面白いだろうな~とか、新しい分野ですけどタトゥーアートも挑戦したいな~とか、色々想像しながらワクワクしてます(笑)。加えて、先ほども少しお話しましたけど、海外挑戦したい人のサポート、現地コーディネートはやってみたいですね。いずれにしても自分も誰かもワクワクするようなことには関わり続けたいなって思います!

__それこそサラリーマンとかデュアルキャリアとか、会社に所属して働いている多くの人は、山田さんのように毎日が挑戦でワクワクって人は多くないと思うんです。それこそきっとスポジョバを見ている人も、仕事に悩んでいる方がほとんどと思うんですけれど、山田さんはそもそも「仕事の捉え方」が違うと思っていて。

山田:まずは自分の心に従って、それに対して「今」行動してみるっていうのが良いと思います。私も転職サイト見たことあるからわかりますけれど、やっぱり自分がやってみたいことを探して、その中でできることを探すって考え方のほうがワクワクするじゃないですか!比較的「自分は何ができるんだろう」って経験から考える人が多いと思うので、そうじゃなくてやりたいことから経験をどう活かせるかを考える。そうすると意外と、やりたいこともできることも、やらなきゃいけないことも、どんどん増えてくると思います!

__求人に「必須条件」が存在することで経験から考えてしまうと思うので、ちょっとアプローチ変えてみますね(笑)。さて、これまでバスケ業界の話も、働き方も、収入や夢の作り方など、さまざまなことを聞いてきました。今に至るまでも数々の困難を乗り越えて挑戦し続けている山田さんから最後、新しいステップに進みたい人に向けて背中を押すような一言、お願いします!

山田:スポジョバさん見てて、業務委託とかもそうですけど働き方って本当に多様化していると思っています。だからこそ新しい雇用形態だとしても自分で調べるのはもちろん、まずはやってみたいことを見つける。その上で、私もオンラインコミュニティで色んな人と話してますけれど、そういうところで自分の視野を広げてみることも大切だと思います。こんなに色んなところに情報が落ちてる世の中なので、SNSでもなんでもいいんですけど絶対どこかにそのキッカケはあると思うので。「いつかやろう」だと忘れちゃうから、今やってみる。探してみる。私のアートとか挑戦がキッカケになれれば嬉しいなぁ……。そうしたらいつの間にか、ワクワクした毎日を過ごせるんじゃないかなって思いますし、少なくとも私はそれで、毎日楽しく過ごしています♪♪

__山田さんに負けないように、サラリーマンの私も楽しくワクワクする毎日を過ごせるように頑張ります(笑)!今日はありがとうございました。山田さんのこれからの挑戦、応援しています!





【PROFILE】

山田 愛

三重県出身。兄が楽しそうにバスケする姿を見たことがキッカケで、小3の終わり頃から八郷女子ミニバスにて競技を始める。朝明中学→桜花学園。高2の頃にはインターハイ・WCの2冠、高3では国体優勝を達成した。また世代別日本代表としてU-16アジア選手権優勝、U-17世界選手権4位を経験。この時に初めて体験した海外の文化の違いに衝撃を受け「いずれ世界で戦いたい」と猛烈に思う。「桜花卒業後に実業団へ入り日本代表に選ばれ海外からオファ―をもらうとことが最短ルート」と考え、名門JX-ENEOSへ入団。しかしルーキーシーズンで開幕前に左膝の前十字靱帯を断裂。ケガを乗り越えた5シーズン目には右膝の前十字靱帯を断裂。一度バスケをお休みしようとオーストラリアに行った際、バスケ関係者からの支えによって再び選手復帰を決断。同年(2019)、オーストラリアのセミプロリーグNBL1のオルベリー・ウォドンガ・バンディッツに移籍。ポジションはPG。夢のWNBA挑戦に向け日々奮闘中。

プレイヤーとして活躍する傍ら、デザイナー、アーティスト、オンラインバスケ教室のコーチなど、多角的に活動を続け新しいデュアルキャリアを体現している。「将来は現地で、海外挑戦する人のコーディネーターをやりたい。プレイヤーとしてはWNBAに挑戦したい」と、語ってくれた。また最近は映画『ゴシップガール』を観たことでニューヨークにハマってるとのこと。好きなNBA選手はカイリー・アービング。


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【INDEX】

企画:岡千大

広報:河村優里

取材協力:髙橋芙由子





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